酒井文吉さん(須坂市坂田町)大相撲番付表30年余収集

2020-04-04 07:00 am by 須坂新聞

趣味・生活 icon 大相撲ファンの酒井文吉さん(96、須坂市坂田町)は、昭和62年5月場所から番付表の収集を始めて足かけ34年になる。先ごろ無観客で行われた令和2年3月場所(春場所、大阪場所)までで合計196枚に上る。最新版は次の本場所まで須坂坂田郵便局に展示されるため、取材した3月23日は1月場所(春場所)までの195枚が保管されていた。「千代の富士のファンだった。見ていて気持ちがよかった」と懐かしむ。
 今では「番付表はまた今回も来たなあとカレンダーの発表の日を確認する」程度だと言うが、第58代横綱千代の富士(昭和56年)のファンだった昭和の終わりごろは、かなりの力の入れようだったに違いない。
 番付表を購入するきっかけは、酒井さんによると、日本相撲愛好会(大手新聞の記者が始めた)からはがきが届いて会員になったという。平成14年5月場所(夏場所)まで愛好会から購入。その後は日本相撲協会の公認正規販売店から年6回購入しているという。
 これまでに蔵前、両国の国技館へ計9回観戦に訪れている。
 千代の富士について「小さな千代の富士が大きな小錦に勝つ取り組みを思い出す。見ていて気持ちがよかった」。
 また、第65代横綱貴乃花(平成7年)については「勝った時の態度がよかった。貫禄があり、礼儀があり、日本の横綱は見ていて気持ちがよかった」。
 番付表は、途中2場所(平成23年3月場所と同5月場所)が抜けている。
 力士の「故意による無気力相撲」が表面化し、調査期間中のため日本相撲協会が本場所開催を不適切と判断して自粛。番付表も発売が中止され、協会から購入者に「おわび」状が出された。
 相撲グッズを大切に保管するが、無形の相撲甚句を今でも口ずさむ。50代のころの長野興業の時に覚えたという「出世力士」(相撲甚句)は、宴席で披露して喜ばれたという。
 漁師の息子が努力してデビューする心情をうたう。「必ずなりたやあの関取によー、あーあ親の許しを無理に受け、先祖にお神酒を挙げて固く誓って国を出てー、部屋に入って横綱夢にみて、大空かける大望が、あまた優れる関取衆、土俵ぬらす玉の汗ー」
 生業(酒井石油)は現社長(利郎さん)が継承している。短歌を11年前に始め、郷土力士「御嶽海」や妻恵子さん(故人)も作品に詠んでいる。
 大正13年生まれ。激動の昭和には海軍志願兵として関門海峡などで機雷掃海の任務に就いた。戦友との悲しい別れを経験した世代として平和への願いは人一倍強い。
 平成から令和の世相を創作者の目で見つめる。今年2月の須坂新聞投稿「生き延びて令和の御代(みよ)に入り来ぬ白寿夢見て祖先を偲(しの)ぶ」には実感がこもる。
 「85歳の時に何か始めなくては」とNHK短歌を独学。平成25年4月から毎月の新聞投稿を欠かさない。
 また、横須賀時代の思い出の地鎌倉(鶴岡八幡宮主催の献詠歌集募集)には8年ほど毎年1歌を献じている。
 「海軍ではよくかんで食べろと仕込まれた。軍艦が沈み、海の中に1時間いて重症の戦友を看護した。彼は陸に上がって亡くなった。短歌を覚えてよかったと思っている。相撲も短歌も達者なうちは続けたい」。新聞の記事を題材にして、創作活動は続いている。

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