2023-06-10 09:54 am by 須坂新聞
高山村山田温泉の老舗旅館「緑霞山宿 藤井荘」で5月31日、6月1日に指された将棋の第81期名人戦七番勝負(日本将棋連盟など主催)の反響が須高各地に広がっている。挑戦者の藤井聡太竜王が渡辺明名人を破り、最年少での名人位獲得と七冠を達成。歴史的快挙の達成は全国的な注目度も高く、両棋士が2日間で食べたおやつなどが脚光を浴びている。うれしい反響が続く須高各地を取材した。
対局初日、午前10時のおやつに藤井竜王が選んだコモリ餅店(須坂市北横町)のブッセ「一万石」が話題を呼んだ。「反響が大きく、問い合わせや県外からの来店も多くて驚いている」と店主の島田昌明さん。
一万石は、あんずジャムとバタークリームを挟んだブッセ。添加物を加えず卵と小麦粉、砂糖で作るブッセ皮は、中身はふわふわで表面はサクッとした食感が特長だ。
1964年に有志の4店舗が共同で開発。多くのファンに愛されたが、2014年秋に市内で最後まで製造・販売を続けた丸田製菓舗が閉業。「幼い頃から親しんでいた味。絶やすわけにはいかない」と島田さんは、丸田製菓舗の丸田保夫さん(須坂市北旭ケ丘町)から技術指導を受けた。製造方法を継承し、食感や味を再現。パッケージをリニューアルし、翌年から同店で販売を開始した。
丸田さんは「とても真面目で真剣に学んでくれた」と当時を振り返り、「こだわりを引き継いでくれたのが何よりもうれしかった。味も見た目も昔から変わらない仕上がり」と信頼を寄せる。
島田さんは「残さなければいけない地域で愛される財産。須坂を代表する菓子を、という思いで頑張ってきた。先代の皆さんにいい報告ができたかな」と安堵。丸田さんは「こんなことになるとは予想外だが、とてもうれしい」と喜んでいた。
対局2日目の午前10時のおやつでは、渡辺名人が栗の木テラス(小布施町中町)のモンブランを選んだ。同店のモンブランは2年前にも渡辺名人が対局中のおやつに選び、昨年行われた囲碁の本因坊戦でも一力遼棋聖が選んだ。今回の対局後の週末は「名人戦を見て」と来店した人も少なくなかったという。
中島基文店長は「とても光栄なこと。注目度の高い対局だったので、反響も大きかった。明るい話題をきっかけに地域全体で食や観光が盛り上がるとうれしい」と話していた。
対局の舞台となった藤井荘は「温泉街ににぎわいを」と19年ごろから村に働きかけ、開催地に応募。21年の初開催以来2回目の対局で「旅館と同じ名前の藤井さんに対局してもらいたい」という願いを叶えた。対局翌日の会見で藤井新名人は、「(同じ藤井という名前に)縁を感じている。この場所で名人になることができたことが思い出になる。高山村の皆さんに歓迎してもらい、素晴らしい対局環境を用意していただいた。またじっくりと訪れたい」と語った。
信州高山村観光協会によると、問い合わせやホームページへのアクセス数などが増え、名人戦をきっかけに村の注目度が高くなっているという。対局後も週末を中心に県内外から山田温泉を訪れる人が少なくない。
内山信行村長は「高山だけではなく、須坂や小布施の食なども注目された。これをきっかけに、須高全体がさらに活気に溢れてほしい」と話していた。
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