井浦貴史さんが盆栽作風展で2度目の日本一

2023-11-11 10:27 am by 須坂新聞

お知らせ icon 須坂市高橋町の盆栽園「勝樹園(しょうじゅえん)」の井浦貴史さん(46)の作品「風神」が、このほど開かれた「第49回日本盆栽作風展」(組織委員会主催)で、全部門を通じて最高賞の内閣総理大臣賞を受賞した。7年前に出品した「雷(いかずち)」に続いて、2度目の日本一に輝いた。
 いずれの作品も8年前に亡くなった父弘勝さんから受け継いだ木を育てた。「最後の挑戦として、父の仕事の集大成として仕上げたかった。プロによる品評会で、これまでやってきたことが認められてうれしい。今後はさらに人材育成と業界の発展に尽くしたい」と決意を新たにした。
 作風展には、8部門に全国のプロの盆栽家から約190点が出品された。井浦さんはこれまでも部門トップ賞は数回受賞している。
 「風神」は約30年前に弘勝さんが入手した推定樹齢1,000年、樹高約2mの天然ハイビャクシン(真伯)の原木を盆栽に仕立てた。ゆったりとうねるように生えている茶色い幹や枝、緑の葉に、枯れて白く残った幹が生き物のように絡み付いて一体となっている。「生と死が融合した、不思議な世界」と井浦さん。
 原木は幹や葉が扇形に伸びていた。それを切断し、長年かけて鉢の中で育てながら、根や枝を接いだり、針金矯正などで茶色い幹をうねらせて白い幹に巻き付かせるなどした。併せて、白い幹も自然な風合いに削るなどして全体の形を整えた。樹高を約1?とした。
 井浦さんは「虫害や病気への対応、日照調整、水やり、木の手入れなど日々の管理が重要。適切な管理やタイミングの見極めは毎日の経験でしか身に付かない」と説明する。
 井浦さんは高校卒業後、埼玉県の盆栽家の下で5年間修業し、20代半ばから弘勝さんと働き、培養管理を学んだ。鉢の中で根や枝を接いで盆栽を仕立てる技術は親子で確立した。「自然は偉大な生命力を持ち、盆栽は鉢の中に自然を置くもの。人間が作るのではなく、その木の良さをいかに生かすかが大切。そうした盆栽への愛情や謙虚な心を技術と共に次世代につなげていきたい」と話す。
 現在は日本盆栽協同組合理事を務め、技術と実績を備えた国内トップクラスの若手盆栽家として活躍。家を空けることが多く、その間は母京子さん(74)に世話をしてもらう。今後は若手育成や海外への情報発信にも力を入れていく。
 作風展の入賞作品は12月15〜17日に東京・上野グリーンクラブで展示される。

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