映画「風琴(ふうきん)〜あるリードオルガン修復家のあしあと〜」来年全国公開へ

2024-09-14 07:00 am by 須坂新聞

お知らせ icon リードオルガン(足踏みオルガン)の音色、文化と、修復や調律の大切さを伝えるドキュメンタリー映画「風琴〜あるリードオルガン修復家のあしあと〜」(黒瀬政男監督・構成)の製作が、来年の全国公開に向け進められている。数々のオルガンをよみがえらせてきた和久井輝夫さん(87、須坂市南原町)が主要キャストの一人。古くから親交がある足踏みオルガン奏者の第一人者中村証二さんらと共に出演する。
 かつて全国の小学校で使われていたリードオルガンは、ピアノや電子楽器の普及に伴い姿を消している。今回の企画を製作プロデューサーから聞いた和久井さんは「次世代にオルガンを残したくてこの仕事を続けてきた。映画出演は思いがけなかったが、その願いが伝わるのならと思った」と話す。
 和久井さんは須坂市出身。河合楽器製作所で、ピアノとオルガンの調律整音技術を併行して身に付け、独立した。現在、リードオルガンを生産するメーカーはなく、修理メンテナンスできる技術者も数少ない。
 そうした中、歴史的に貴重なオルガンも数多く手掛けてきた。陸前高田で津波に被災し絶望的だったオルガンさえも、修復家の意地で復元。中野市の高野辰之記念館、須坂市では須坂教会の他、母校・仁礼小に保管されていた昭和10年代のリードオルガンもよみがえらせた。
 2019年10月の台風19号は、当時住んでいた須坂市北相之島町にも甚大な被害を及ぼした。工房も当然のことながら大量の泥水に漬かった。幾つもの古いオルガンは泣く泣く廃棄。それでも120年前のイギリス製リードオルガンはどうしても諦めきれなかった。
 「オルガンの上の部分は助かったから、ペダル鍵盤の部分を解体、袋の張り替えなどをして、何とか音が出るようになった」。現在は移り住んだ自宅の一角で、存在感を放っている。
 一線を退いた今も和久井さんは、オルガンに触れ、生きた楽器が奏でるやさしい音色の魅力や、壊れても修復する意義を語る。その姿は“オルガン愛”にあふれている。
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 昨年秋に和久井さんの自宅や須坂教会、仁礼小などでロケがスタート。東京、神戸、松山などでも取材・撮影が行われた。映画には妻紀子さん、同じ修復の道を歩む長男真人さんらも、出演、取材のほかオルガン演奏などで協力した。
 映画「風琴」製作実行委員会は来年(時期は未定)の劇場公開を目指して、11月8日までクラウドファンディング(モーションギャラリー)を実施している。目標額は100万円。連絡先は窓口のコウベレックス(兵庫県神戸市)fukin@koberecs.com

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