教育的効果、地域への影響など「須坂学園構想」を考える

2025-03-29 10:32 am by 須坂新聞

学校・教育 icon 須坂市の市民有志でつくる「須坂子どもの学びを語る会」(町田重夫代表)は8日、市教育委員会が示す市内小中学校の再編に関する基本方針案「須坂学園構想」を考える学習講演会を市生涯学習センターで開いた。和光大学(東京都)現代人間学部心理教育学科教授の山本由美さんが、全国の学校統廃合の状況や小中一貫教育の事例を基に学園構想に対する見解を述べた。地域に学校がある意義を示し、慎重に検討を進めるよう呼びかけた。約90人が聴講した。
 須坂学園構想は、未来を見据えた新たな学びの実現に向け、現在の11小学校・4中学校・1支援学校を将来的に四つの「学園」に再編。いずれも9年間の義務教育を一貫して行う「義務教育学校」や「小中一貫型学校」の開校を目指す内容だ。
 山本さんは、高甫小・仁礼小・東中を統合する「第一学園」について、1〜4年生(高甫小校舎)と5〜9年生(東中校舎)を二つの校舎に分ける施設分離型の義務教育学校は「すごく変則的」と指摘。現在、全国では奈良県王寺町にしかないという。
 「今は1〜4年生で区切ることが見直されている。心身の発達に合っていると断言できることはない」と主張。「5〜6年生がリーダーとして成長する機会も奪ってしまう」とした。義務教育学校の施設分離型は、「必ずしも統合を伴わない」とも述べた。
 須坂小(豊丘小)・小山小・日滝小・常盤中・支援学校を統合して小中一貫型学校(施設一体型か隣接型)を計画する「第二学園」については、豊丘小の「2段階統合」に対し「通常はあり得ない」と強調。学園構想で豊丘小は、将来的に第二学園の通学区にするため、児童は今後6〜7年後までに須坂小に通うこととしている。
 山本さんは「時期が近ければ(統合を)2回経験する子どもも出てくる可能性があり、大きな負担になる」と危惧。「対等で平等な統合が基本。どんなに小さな学校でも吸収合併だと小さな学校の子どもや地域に負荷がかかる」とした。
 参加者の一人は「人間関係を上手につくるスキルを早い段階から学ぶためにも、クラス替えができるある程度の規模を確保することが必要では」と質問。
 山本さんは「地域に学校があることの方が価値が大きい。地域が全面的にサポートしている学校は精神的健康度がものすごく高い。教育学的にはクラス替えの有無と教育的効果との相関はない」と答えた。
 別の参加者は、小中一貫教育のメリットを質問した。山本さんは「メリットなどの議論は初期の頃からは移り変わっていて、今は『中1ギャップ』とは言わない」と説明。「市教委は現状の議論を確認した方がいい」とし、一貫教育の制度的な検証を求めた。
   ◇  ◇
 市教委は4月以降、保護者や地域を対象に学園構想について説明会を開く。また、4月1日発行の広報と一緒に、小中一貫教育のメリットや、市が目指す新しい教育の特色などを載せた印刷物を全戸配布する。
 一貫教育の良さとして、学力向上に向けた新たな取り組みや、小学校から中学校に進学する際のギャップ解消、幅広い年齢層とのコミュニケーション―が期待できると紹介している。

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