天国の父に捧げる菊の大輪〜父から娘に受け継がれた菊作り

2008-11-08 07:00 am by 須坂新聞

趣味・生活 icon 父から娘に受け継がれた菊作り―。あす9日まで臥竜公園で開かれている信州須坂大菊花展の9鉢組花壇の部で、須坂市大谷町の熊井美恵子さん(62)が初出品で市長賞を受賞した。熊井さんの父は菊作りの名人古川勇さん、昨年12月に92歳の生涯を閉じた。病床の父から教えを受けた娘の菊は見事な大輪となって、天国の父に手向けられた。

「親孝行ができてよかった…」
 父の古川勇さん(米子町)は60歳を過ぎてから菊作りを始め、30年以上須坂菊愛好会のメンバーとして元気に活躍していた。だが、2年前に体調を崩して約4カ月入院、体が思うように動かせなくなってしまった。二女の美恵子さんは退院した勇さんを実家に見舞うたび「何とか元気づけることができないか」と思い、それには勇さんが生涯の楽しみにしている菊作りが一番と、ベッドの近くまで鉢を運び、勇さんの言うままに手入れを行い、勇さんも細部には自ら鋏を入れた。
 その年の菊花展は入賞できなかったが、父娘合作2年目となる昨年は美恵子さんへの比重が多くなり、天候不順などで苦労したものの9鉢組花壇の部で市長賞を受賞。勇さんは家族に車いすで連れてきてもらい「よくやってくれた」と大喜び。美恵子さんも「親孝行ができてよかった」と胸をなで下ろした。
 だが、その1カ月後に他界。これで菊作りは終わりにするつもりだったが、愛好会のメンバーから「菊作りは団地でもやっている。自宅でもできますよ」と勧められた美恵子さんは「菊を作れば天国の父はきっと喜ぶ。ある程度のことは覚えたし、家にいることだから、ダメもとでいいからやってみよう」と一念発起。勇さんが「難しいが、作りがいがある」とこだわりを持っていた9鉢組花壇に挑戦することにした。
 菊作りは概ね5月から11月までかかり、毎日の世話が不可欠。美恵子さんは遠出を控え、夫の求治さんも水はけの設備を作るなど協力した。分からないことは勇さんが付けていた詳細な「菊日記」が役立ったという。
 そして、美恵子さんの名前で出品した今年の菊花展・9鉢組花壇の部で父娘による2年連続の市長賞。美恵子さんは「受賞を聞いてびっくり、すぐに墓前に報告しました。菊は育てる期間や咲いている期間も長く、育てる楽しみがあります。自分でやってみて、父が菊作りに情熱を傾けていた理由が分かりました。父と同じ年齢で始めたのも何かの縁、これからも頑張ってみようと思います」と話している。なお、表彰式は6日、臥竜山公会堂で行われた。

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