85歳のラストリサイタル〜浦野りせ子さん

2009-11-23 10:00 am by 須坂新聞

趣味・生活 icon 元武蔵野音大教授で日本オペラ振興会評議員の声楽家・浦野りせ子さん(85・須坂市新町)は12月4日、現役最後となるリサイタルを、メセナホール大ホールで開く。幼いころから描いた歌一筋70年の公演生活に区切りをつけるフィナーレまであと2週間。自宅のレッスンルームからは力強く、熱い歌声が響いてくる。

 現・須坂東高校を卒業後、しばらく音楽講師として教壇に立ったが、27歳の時、恩師の勧めで現・東京芸術大に入学した。卒業後はイタリアへ渡り、ジョルジョ・ファヴァレット氏に師事。当時活躍中だったイタリアの作曲家ピッツェッティ、マリピエロらから直接、歌曲作品についての指導を受けた。数多くのリサイタルをこなし、オペラではウインナーワルド・オペラ賞、ジロー・オペラ賞を受賞。卓越した歌唱力と演技力を兼ね備える稀な才能は世界で大きく開花し、オペラ「マダム・バタフライ(蝶々夫人)」のスズキ役をはじめ、数多くの舞台で高い評価を得た。
 オペラ歌手の多くは50歳を過ぎるころに現役を退くといわれるが、浦野さんには無縁の話。52歳で開いたリサイタルではファヴァレット氏から「浦野さんはイタリアでベルカント唱法を自分のものとし、芸術家としての豊かな個性を磨きあげ、その類なき美声でイタリア芸術の精髄を表現することに成功した」と、称賛するコメントが贈られている。
 また著名な日本の作曲家、平井康三郎、信時潔、松本民之助の各氏にも指導を受けている。「若いころはとにかく一生懸命でした。学生時代、先輩の歌を吸収したくてヤマハホールに連日通い、終わるやいなやエレベーターに飛び乗ると、いつも大作曲家の信時先生が上の階から乗っていらして『あんたもよく来るねぇ』と言われて。その時私はお願いしてご自宅へ伺い、すでに暗譜していた『沙羅』を聞いていただいたんです。私の前には常に道が開けて、ありがたい人生を歩かせてもらっていると思います」と振り返る。
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 2年前に拠点を須坂に戻し、故郷の文化発展も願う。過去2度のすざかオペラ公演を成功に導いた。今も朝起きてすぐに発声練習なしで歌えるという。「のどの使い方はもちろんのこと。きっと神様の贈り物なんですよ」。
 「十分な声が出るうちに故郷のみなさんに歌声を届けることができる私は本当に幸せ。音楽への思いすべてを注ぐリサイタルにしたい」と話す表情はいきいきとしている。
 当日は日本歌曲とイタリア歌曲、團伊玖磨歌曲集「六つの子供のうた」ほか、イタリア歌曲、オペラの名曲を披露。ピアノ演奏は花岡千春さん(松本市出身・国立音大副学長)が務める。開場は午後6時、開演は6時半。全席自由2,000円。高校生以下1,000円。問い合わせは浦野酒舗☎026-245-0410。

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