赤ガエルが里帰り?

2022-05-28 07:00 am by 須坂新聞

お知らせ icon 須坂市福島町で鉄道模型博物館「トレインギャラリーNAGANO」を経営した深沢慶一さん(77、長野市)が敷地内に保存展示していた長野電鉄旧2500系「赤ガエル」が、66年前に製造した鉄道車両メーカー「総合車両製作所」(横浜市金沢区、旧東急車輌製造)に譲渡され、里帰りするため24日夜、須坂の地を離れた。
 長野電鉄線を走ったC10編成のモハ2510。モは電動車、ハは普通車の意味。
 1980年10月22日に使用開始され、97年6月13日の廃車まで約18年間、多くの利用客の足として活躍した。赤とクリーム色のりんごカラーが「ながでん電車」の安心感を地元に与えた。
 長野県にやってくる前は、東急東横線など首都圏の東急電鉄線を走った。56年に新造された東急電鉄旧5000系。デハ5015(デは電動車、ハは普通車)。緑色で表情が愛らしいため「青ガエル」の愛称で親しまれた。長野電鉄では寒冷地用等に改造され、2500系「赤ガエル」に生まれ変わった。
 須坂市福島町で約25年間保存展示した深沢さんは「横浜まで200kmを超える道路の通行許可などの手続きが3〜4カ月かかった」と経過を語った。
 深沢さんがかつての青ガエルに出会ったのは55年前にさかのぼるという。「学校を終えて家業(酒卸会社の深沢商店)を継ぐため、1967(昭和42)年から2年間、横浜の酒問屋に修業に行った。寮のある横浜市内(横浜駅)から通勤で東急東横線を使っていた。当時は6両編成で東急の花形車両。その電車が長野にやってきて何回かよく乗った。トレインギャラリー(ミニチュア鉄道模型コレクション約4,000両の私設博物館。昨年春閉館)の看板になると思い、取得した」
 同車両は、長野電鉄のほか上田電鉄や松本電鉄など県内私鉄でも使われている(深沢さん)という。
 鉄道車両の軽量化に資する記念すべき車両で、日本機械学会「機械遺産」認定や保存公開をとの声が上がっている。
 前身の東急車輌製造の製造だが、総合車両製作所は、創立10周年の記念事業の一つとして、同車両の先頭車両を横浜事業所で復元保存することと決定した(4月発表)とした。
 同社広報担当の大野竣介さんは「保存方法が詳細に決まっているわけではないが、期待の声が上がっているので検討していく。歴史的価値のある車両で、技術が革新的だとの見解を持っている。保存価値があり、緑色の青ガエルに復元されるのか。大勢が別れを惜しむ姿から地元に愛された車両だと思う。思いを継承し、大切にしたい」と語った。
 同社(前身の東急車輌製造時代含む)が製造し、同社に里帰りする車両は今回4例目。
 過去3例は、オールステンレス製車両が2例(東急電鉄7000系、0系新幹線)、鉄ベースでステンレス強化のセミステンレス製が1例(東急電鉄5200系)という。
 深沢さんは「この電車を設置した当時も、見送る本日もマスコミをはじめ大勢が来られ、こんな幸せな車両(くるま)はない。鉄道車両の99.9%は解体されてしまう。永久保存されるとこんなうれしいことはない。ありがたいことだ」と里親の務めを果たした気持ちを語った。

2022-05-28 07:00 am by 須坂新聞 - 0 コメント



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